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Cute Movies

夕凪の街 桜の国

監督:佐々部 清

原作:こうの史代(「夕凪の街 桜の国」双葉社刊)
脚本:国井桂、佐々部清 
出演:田中麗奈/麻生久美子 吉沢悠/中越典子/伊崎充則/金井勇太 藤村志保/堺正章

(c)2007「夕凪の街 桜の国」製作委員会
7月28日(土)よりロードショー
「靴が減るけん」と、会社の帰り道は川沿いを裸足で歩く皆美。

(c)2007「夕凪の街 桜の国」製作委員会
七海は、最近動きが不審な父親の後を追って広島までやってきた。

(c)2007「夕凪の街 桜の国」製作委員会
原爆投下から13年後の広島を舞台に、被爆体験に苦しみながらも幸せに向かって生きようとする皆美(みなみ 麻生久美子)の物語「夕凪の街」。
その皆美の弟を父に持つ、現代ッ子七海(ななみ 田中麗奈)が家族のルーツを見つめなおしていく「桜の国」。
ふたつの違う時代に生きる二人の女性のストーリーが、戦争と平和、命の尊さを教えてくれる。

ここ何年か、戦争を描いた作品がいくつも出ている中、戦後を描いているものは珍しい。それも13年後という、ある意味「中途半端」にも思える時代に焦点をあてた「夕凪の街」。戦闘シーンなどまったく出てこないにもかかわらず、戦争や原爆の恐ろしさや悲しさを切々と伝えてくる。激しいストーリーではないのに、ひとつひとつのシーンに目が離せず、試写を見て1ヶ月もたつ今でも心に残っている。

「夕凪の街」皆美役の麻生久美子は、しっかりしているがどこか儚げな、その時代に翻弄されて生きる女性を見事に演じており、「時効警察」で見せてくれるコミカルな三日月しずかとはまったく別人だ。

また、「桜の国」七海役の田中麗奈は、反対に男の子っぽい現代の女性を、ごくごく自然に演じている。ある日ちょっと父親を尾行するつもりが、夜行バスでいきなり広島まで追いかけちゃうあたりが何とも子どもっぽいというか、現代的。同じ20代後半の女性でありながら、生きていく意味に悩まされる皆美と、行き当たりばったりで自由奔放な七海に、時代の違いを感じずにはいられないのは、この作品の戦略?

別の時代を描きながら、最後にはそれが全部つながり、戦後何十年たっても終わっていない原爆の傷跡が浮き彫りになってくる。

「夕凪の街 桜の国」は、たった一度の被爆の苦しみが、世代を超えても違った形でずっとずっと続いているんだと、教えてくれた。「原爆は仕方なかった」なんてことを言ってしまうようなどこぞの政治家にはぜひ見てもらいたい作品だ。


text by...  たるぴ

2007/07/27

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