鹿嶋市は東に太平洋、西に北浦の海と湖に面した高台が多い土地です。夏は涼しく冬は暖かい、海洋性の安定した温暖な気候が特徴で一年中過ごしやすい場所です。この地域は昔から海の幸や山の幸に恵まれ、現在も緑が多く四季折々自然があふれています。

「おお槻農園」はそんな鹿嶋市にある農園。完全な自然栽培で育てられた野菜、お米を提供しています。色や形などに多少バラツキがあり見た目は不揃いなこともありますが、味が濃く身が詰まっています。多くの人に昔ながらの自然栽培法を取り入れて育てた野菜本来の味を楽しんでください。

おお槻農園では農薬・肥料を使わない栽培方法のことを「自然栽培」としています。国の基準をクリアした農薬すら使わず、肥料は化学肥料も有機肥料も使いません。よく聞く「有機栽培」と混同されがちですが、有機栽培は一部の農薬と有機肥料を使用します。「一般的な栽培(慣行栽培)」では農薬も肥料も使いますが、収穫量は多く出荷まで短期間で安定して生産できるメリットがあります。

当農園ではこの中の「自然栽培」に力を入れています。どんな作物を育てるにも土が大事ですが、自然栽培に使う土づくりに約10年かけています。また自然栽培は一般的な作り方と比較し5倍の労力が必要なのに対し、収穫量は5分の1だと言われています。デメリットが大きいのでは？と思われがちですが、その美味しさの違いは明らかです。農薬や肥料を一切使わなくても、条件を整えれば野菜は立派に育ちます。野菜本来の味を求めている人たちがいる、そう思うと生産の大きな意味があると考えています。返礼品では、その時の旬のお野菜、トマト、スイカ、サツマイモ、じゃがいも、カブ、冬瓜、サニーレタス、青菜など、8～10種類を詰め合わせてお送りしています。

「おお槻農園」で自然栽培野菜を育てている生産者、大槻繁之（おおつきしげゆき）さんにお話を伺いました。

私の両親は農業を営んでいましたが、私は東京でサラリーマンとして働くことを選択しました。ある日、私は満員電車で暇つぶしに携帯で某サイトを見ていました。「農家の嫁」という投稿で、「農家に嫁いだら『楽でいいね』『学歴無くてもできるね』と言われる。農業は馬鹿でもできる楽なものなんですか」という悔しさが伝わる質問を目にしたのです。そこに寄せられた多くの回答を読むうちに、私は気が付くと号泣していました。両親を通して農業の苦労を知っていたから…ではなく、実は「バカでもできる」という意見に同調する自分に気づいたからです。「食を支える人になんてことを」という擁護派の意見が胸に刺さり、涙が止まらなくなったんです。

湧き出た農業への罪滅ぼしの気持ちから、私は妻と婚約した際「何年か後には鹿嶋に帰りたい」と言うと「なら今すぐ帰ろう」と言われ、あっという間に鹿嶋に戻ってきました。妻の直感、判断力には驚かされますが、振り返るとすべて正しかったと思えます。

その後、私は両親に農家を継ぐ決心を伝え「無農薬無肥料のオーガニック野菜」への挑戦を決めました。ただ道のりは決して楽ではありませんでした。ノーマルな畑作と並行すると初年度は何とか稼げましたが、翌年から減収。計画が外れ収穫量が減り、高いので売れない…。しかし少しずつ見えてきたものもありました。私と同様に、自然栽培に挑戦するため他県から鹿嶋に来た唐澤秀（からさわしゅう）さんらとの交流から刺激を得るなどして、自然栽培の奥深さを実感したのです。

農業を始めて「命は常に入れ替わっている」と感じます。今日の畑は昨日と同じではない。土の上を１歩歩いただけでも命は入れ替わり、循環して成長します。体に悪影響を及ぼすものをわざわざ使わなくても命は育ちます。そのことを気づかせてくれただけでも農業は尊く奥深く、「バカではできない！」と実感させられます。「求めている人のために良いものを食べさせてあげたい」その想いを胸に、自然に感謝しながら生産し続けたいと思っています。

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